2020年04月28日

ヨハネ研究の森ニュースレターより 「人類史のはなし(1)」

ヨハネ研究の森コースでは、全国的な休校の期間中、
保護者のみなさまと、ヨハネ生全員にむけて、
週2回、ニュースレターを配信しています。

当コースでは、「人類史」をテーマにした課題研究や、
オンラインでの学習サポートなどを実施しながら、
この休校中にも、ひとりひとりが知的な関心を
いだきつづけられるよう、試行をかさねてきました。

ニュースレターは、こうした試みの一環として、
「人類史」研究のおもしろさを、みなで共有し、
あわせて、さまざまな「学び」の情報を、広く
お伝えするために配信されているものです。

今回は、このニュースレターの記事のなかから、
「人類史のはなし ―「定住」と「遊動」―」を、
みなさまにもご紹介いたします。

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 人類史のはなし ― 「定住」と「遊動」 ―(ニュースレター第3号より)
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世界に危機を引きおこしている、新型コロナウイルスをはじめ、
人類は、「感染症」のおそろしさと、となりあわせで生きています。

いったい、「感染症」は、いつから、人間にとって、
これほどまでに、おそろしいものとなったのでしょう。

それは、いまからおよそ1万年前に、私たちの祖先が
「定住」をはじめたときだ、という考えかたがあります。

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かつて、人類は、ひとつのところにとどまらず、
狩りをしたり、木の実や果物を集めたりしながら、
色々なところを移動して、暮らしていました。

このような暮らしかたを「遊動(ゆうどう)」といい、
決まった家をもたず、移動しながら生きる人たちを、
「遊動民(ノマド)」というのです。

パソコンをもって、移動しながら仕事をする人を、
「ノマド・ワーカー」といいますよね?
ちょっと、かっこいい響きにきこえませんか。

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ところが、あるとき、人間たちは、「遊動」をやめて、
ひとつのところで、長く暮らすようになりました。

それが、新たな人類のライフスタイル、「定住」です。

みなさんのなかに、今も「遊動」している人はいますか?
ある主任研究員は、むかし、世界中を遊動していたそうですよ。

でも、みなさんにはきっと、住まいがあって、
そこでだいたい毎日、ごはんを食べ、トイレをすませて、
決まった場所で、ねむっていることでしょう。

それが、人間の、当たり前の暮らしかただと、思いませんか?

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ところが、人類が、この「定住」をはじめたのは、
「たったの」1万年前のことなのです。

1万年前なんて、大昔のことのように感じますね。
それなのに、「たったの」とは、どういうことでしょう?

人類が、「ヒト」といわれる存在になったのは、
今から、50万年ほど前のことだといわれています。

ヒトは、そのころから、じつに49万年ものあいだ、
ずっと「遊動」する生活をつづけていました。

だから、「定住」しはじめた1万年前は、つい最近のことで、
まだまだ慣れない、新しい生活スタイルだといえるのです。

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今でも、ゴリラやチンパンジーなどの、人間に近いといわれる
霊長類の多くが、「遊動」生活をおくっています。

しかし、人類は、それまでの自由な「遊動」生活をやめて、
いろいろガマンしなくてはいけない、「定住」を選びました。
(成長するにつれて、「定住」のつらさがわかりますよ…。)

いまの私たちも、心のどこかで、身軽に、どこでも生きていける
「遊動」の自由にあこがれている、という研究者もいるほどです。

◇山極寿一(霊長類学、京都大学総長)
 「AIやITは、ヒトを再び“霊長類の遊動生活”へと誘う 」
 (文藝春秋オンライン)

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ともあれ、私たち人類は、その多くが「定住」をはじめました。
そして、そこから人類の社会は、とてつもない発展をつづけます。

すでに世界の人口は、70億人を超え、北から南まで、
地球上のあらゆる土地で、ヒトが暮らすようになりました。

人類の「定住」戦略は、大成功してきたともいえるのです。

ところが、この「定住」こそが、感染症を、
人間にとって、非常におそろしいものにしたといいます。

なぜ、そのように考えられているのでしょう?
次回のおはなしに、つづきます。

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  本のおすすめ
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山極寿一『15歳の寺子屋 ゴリラは語る』(講談社)
 ※ゴリラの研究から、人類の本当のすがたにせまります。

西田正規、加藤 晋平『森を追われたサルたち』(同成社)
 ※文化人類学の見地から、「しかたなく」定住する人類を描きます。

posted by stjohns at 11:00 | ニュースレター